温暖化するとハリケーンの勢力が衰えにくくなる

「温暖化による海水の表面温度の上昇により、上陸したハリケーンが長期間強度を保つ傾向にある」との報告(沖縄科学技術大学院大学の研究チームによるもの)が、英科学誌『Nature』に発表されました。(2020年11月11日)

ハリケーンは海洋からの水蒸気の供給によって強化されるため、沿岸部地域に被害をもたします。いったん上陸すれば勢力が弱まりますが、弱体化のペースが遅くなり、消滅するまでにかかる時間が約2倍になっていることが今回の研究で判明しました。

過去50年の熱帯低気圧を分析した結果、海水の表面温度の上昇によりハリケーンに含まれる水分が増えることで、勢力の弱体化が遅くなっているということです。

海面水温の上昇とハリケーンの減衰時間の増加
出典: Nature

研究を主導した、沖縄科学技術大学院大学のピナキ・チャクラボルティ教授は、「残念なことに、温暖化が続けばハリケーンの減衰速度も遅くなり続けること。そしてその結果、さらに内陸部がこれまで以上に激しい暴風雨に見舞われることになることも、我々の研究で分かっている」と警鐘を鳴らしています。

2020年10月 台風19号被害の様子(長野県 千曲川)

大学のハリケーン専門家は、「今後少なくとも大西洋地域では、保険料の引き上げや建築基準改正の議論も成り立つだろう」、と指摘しています。

出典:Nature, BBC