溶けゆく氷…そのペースは
海水や大気の温度上昇に伴い、地球を覆う氷がこれまでより早いペースで溶けていることが、英国リーズ大学等による衛星観測調査共同研究で明らかになりました。1990年代には毎年0.8兆トンだった融解のペースが、2017年には毎年1.3兆トンまでに増加していたのです。
東京ドームで換算すると、0.8兆トンは東京ドームの約65万個分。1.3兆トンは105万個分に相当します。
また、1994年から2017年にかけては世界全体で28兆トン分の氷が解けていたことも分かっています。これはイギリス全体を100メートルの厚さの氷で覆った場合の量に匹敵するといいます。イギリスの面積は日本の面積の約3分の2、なんと本州と四国を合わせたぐらいの大きさなのです。
この氷の融解はIPCC (気候変動に関する政府間パネル)により想定されたのペースで進んでいます。このままでは沿岸地域への洪水のリスクが高まり、野生生物が依存している自然の生息地を一掃する恐れがあります。2100年までに世界の海面が最大で平均1.1メートル上昇し、沿岸部にある湿地の2~9割が消失する恐れがあると推定されているのです。
著者の1人は「氷の融解は世界各地で起きているが、特に南極とグリーンランドでそのペースが最も早まっている」と指摘。このままでは海面上昇と、それに伴う沿岸地域の洪水リスクが増加すると警告しています。
出典:The Cryosphere, University of Leeds, IPCC : Special Report on the Ocean and Cryosphere in a Changing Climate(海洋・雪氷圏特別報告書)