再生可能エネルギー発電、日本の潜在能力

日本は、世界で最も革新的な技術先進国の一つだ。だが、エネルギー政策は立ち遅れており、現在、一人当たりのCO2排出量の多さでは世界第8位となっている。しかしながら、日本は再生可能エネルギー導入の大きな可能性を秘めている。政府の野心的な政策、そして2050年までにネットゼロ社会(温室効果ガス排出実質ゼロ)およびカーボンニュートラル(炭素中立)を達成するという目標を掲げ、日本は方針転換すべく動き出した。

日本の再生可能エネルギーの大きなポテンシャル

日本地図を一目見るだけで、この列島が秘める洋上風力発電の大きな可能性が理解できる。ところが、2017年のエネルギーミックス(電源構成)に占める風力の割合は、わずか0.6%にすぎなかった。

日本政府は、風力発電の設備容量を 2030年までに10メガワットまで拡大する計画を立てている。その規模は、2040年までに洋上風力発電により30から45ギガワットに達する予定だ。そうなれば、日本は世界第3位の洋上風力発電大国になる。

IRENAによれば、日本は地熱発電の潜在能力の高さで世界第3位 (23GW)につけているということだが、現在、総発電量に占める地熱の割合は2%程度にすぎない。

太陽光発電(PV)もそれに近似している。日本における太陽光発電は、2030年までにエネルギーミックス の12%以上を賄える可能性を秘めているものの、2018年時点ではその割合はわずか4%だった。

何が日本での再生可能エネルギー発電を阻んでいるのか?

そこには興味深い矛盾がある。国際協力機構(JICA)や国際協力銀行(JBIC)、三井住友銀行をはじめとする多くの日本の投資家が、海外の再生可能エネルギー事業を支援している。だがその一方で、国内のグリーンエネルギー事業への投資は停滞している。

財務上の課題

その主な理由としては、より高額なコストや事業展開の手続きの困難さなどがある。現在、日本における太陽光による電気の買取価格は、ドイツのほぼ2倍となっている。この問題を解決するには、日本は固定価格買取制度(FIT:Feed-In-Tariff)を直ちに改善しなければならない。

幸いにも、政府はその問題を認識しており、現在、非住宅用の太陽光発電の入札制度が実施されている。また、問題に対処するため、蓄電池技術の研究開発とソーラーパネルの開発に対し資金援助を行う予定だ。さらに政府は、2030年〜2035年の間に、火力発電よりも洋上風力発電のコストを低減させる方針を掲げている。

地理的な障害

現在、陸上風力発電プロジェクトは、長い認可プロセスと土地利用に関する法規制のために困難だとされている。日本は、その国土の70%が山岳地帯である一方で、6,850の島から成っている。島国であるゆえに、日本の電力系統(電力システム)は諸外国から孤立している。それは細分化され、相互接続の弱い数々の小規模な送配電網で構成されている。その小さな送配電網のそれぞれで需給バランスが保たれる必要があり、それが再生可能エネルギーへの転換をさらに困難にしている。

地熱発電の用地の多くは農村部や山岳地帯にあるため、日本は世界で3番目に大きな地熱発電のポテンシャルを生かすことができない。そうした地域の送電ネットワークはまだ十分に安定していない。もう一つの潜在能力の高い地域は、自然保護プログラムの対象となる国立公園内にある。こうした要因が合わさり、地熱発電所の建設はより高額化し、またより多くの時間を要することになる。

水力発電の成長の鈍化は、最適地がすでに特定されていることに起因する。つまり、そうした地域に残された水力発電所新設の可能性はほとんど無いということだ。

ネットゼロ社会とカーボンニュートラルは、達成可能な目標

ネットゼロ排出の達成は、日本政府にとって急務である。日本は、温室効果ガスの排出を2030年までに26%(またはそれ以上)削減し、2050年までにカーボンニュートラルを達成するという目標を掲げている。環境上の理由はさておき、再生可能エネルギーは、同国の一次エネルギーの海外依存(現時点では 96%超)を軽減することになる。そうした目標達成に向けて、2020年10月に梶山弘志経済産業大臣は、エネルギーミックスにおいて再生可能エネルギーを主力電源化するという野心的な計画を発表した。

現行の計画では、日本は、2030までに再生可能エネルギーが電力需要の最大24%を賄うことを目指している。2018年度の再エネ比率は17%である。例えばフィリピンといった技術的に日本ほど進歩していない国が、2030年までに再エネ比率を35%にすることを目指しており、その他の国々も2025年までにおよそ25%にすることを目指していることから、日本の目標の引き上げ度合いは取り立てるほどのものではないと言える。だが、控え目とはいえ、日本が掲げる目標は正しい方向への一歩だ。

そのプロセスを容易にするために、政府は2021年に新たなエネルギー基本計画を発表する予定だ。日本は、国内における再生可能エネルギー開発の促進により多くの予算を割り当てることになる。さらには、透明性の向上と、電力業界における今後のプロジェクトの計画および投資決定の円滑化に重点が置かれる。

日本の再生可能エネルギーの未来は明るい

日本がこれらの計画を実行に移した場合、 2050年までに67,000人超分の新規雇用を創出することができる。

企業による環境活動もまた、政府の取り組みと一致する。日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)は低炭素な事業活動を推進し、また日本の大手銀行や航空会社の一部はグリーンエネルギーへの転換を強く提唱しており、そのイニシアティブはすでに世間に認められている。

日本は、様々な側面から再生可能エネルギー導入を円滑化させることを目指している。それには例えば、エネルギー安全保障にまつわる懸念の変化、再生可能エネルギーへの投資を促すための新たな政策、民間セクターによる気候変動イニシアティブの強化などがある。このすべてが、再生可能エネルギー、さらにはクリーンテックや送配電網の柔軟性、電力貯蔵システムなどといったエネルギー転換分野において長期的な利益を生み出す魅力的な土壌を創る可能性を秘めている。日本における再エネ主力電源化への道は容易ではないが、それはまさしく実現可能であり、それによって生み出されるクリーンエネルギーへの投資機会は計り知れない。

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本記事はEnergy Tracker AsiaによるPotential of Renewable Energy in Japanを翻訳したものです。