中国の第14次5カ年計画:気候変動対策に関する優柔不断なシグナルを送る

本日、中国の全人代の年次総会にて、 李克強首相は第14次5カ年計画案の重要な要素を発表しました。

その中で、下記の通り、気候変動とエネルギー分野における計画に関しても目標を示しました。

2021年から2025年にかけて、中国は:

・エネルギー強度を13.5%下げる
・炭素強度を18%下げる
・全エネルギー消費における非化石エネルギー比率(水力と原発を除く)を2020年の15.8%から2025年には約20%に増やす
・森林被覆率を24.1%に増やすことを目指す、としました。

以前までの5カ年計画とは異なり、第14次5カ年計画期間中の5年間のGDP成長目標は明確に設定されておらず、実際の状況に応じて毎年目標が決定されることになります。

昨年9月、習近平国家首席は、中国の排出量を2030年までにピークに持っていき、2060年までにカーボンニュートラル達成すると約束しました。今回の第14次5カ年計画は、中国がそこに向けて正しい道を歩めるかどうかを試すものになります。

第14次5カ年計画の草案は全人代の委員がレビューしており、3月11日の会期終了時に承認される予定で、計画の全文は承認後に公開されます。計画案の見出しの目標が変更される予定はありません。

<背景>

中国は世界の排出量の26%を占めています。そのため、今回の第14次5か年計画における経済移行とエネルギーの移行に関する戦略は、今後5年間とそれ以降の中国の排出削減の経路に強く影響することになります。

2020年9月の中国による2060年までのカーボンニュートラル宣言以降、中国の気候変動とエネルギーの専門家は、中国が2030年の削減目標(NDC)を達成するために、より高い排出削減目標を求めてきました。 中国が2030年までに炭素排出のピークを可能にするためには、今後5年間の年間GDP成長率を5.3%と仮定すると、中国はエネルギー強度を14%、CO2強度を19.4%削減する必要があるとしています。今回 発表された数値はその分析に近いものですが、5年間の経済成長目標がないため、野心レベルと実際の排出削減効果を測定することが難しくなっています。

また、多くが第14次5カ年計画に書かれている効率目標に加えて、中国の総量排出(特に炭素排出)に上限を設定するよう求めています。 これまでに、中国における絶対的な炭素排出量の上限は明らかになっていません。

<第14次5カ年計画における気候変動対策とエネルギー分野に関する内容>

今回の第14次5カ年計画では、中国の経済成長、福祉制度、エネルギー消費、環境保護に関する一連の主要目標を設定しています。この中で、気候変動とエネルギーに関連する3つの主要目標は、GDP単位あたりのエネルギー消費量(エネルギー強度)、GDP単位あたりの炭素排出量(炭素強度)、そして非化石燃料のシェアです。

気候変動対策やエネルギーなどさまざまな面で基本的な方向性を決めるため、GDP成長率(通常最も注目される目標)も重要になります。

第14次5カ年計画は、2021年から2025年にエネルギー強度と炭素強度をそれぞれ13.5%と18%下げ、 全エネルギー消費における非化石エネルギー比率(水力と原発を除く)を2025年には約20%に増やすことを目指しています。

18%の炭素強度目標は、すでに中程度と見なされていた過去5年間の計画と同じ削減率を維持しています。一方、5年間計画の中で目標は通常は基準値として設定されているため、それ以上の成果につながる対策が実施される可能性があります。実際に、第13次5か年計画における気候変動と環境に関連するほとんどの目標は、予定より早く実現されました。

また、今回は、GDP成長率に関する明確な5年間の目標を設定せずに、毎年目標を決定することになりました。5年間のGDP成長率に関する目標がないため、経済の排出軌道を予測することが難しくなっています。ただし、Draworld Environment Research Centerが行った分析では、第14次5カ年計画の期間中の実際の年間GDP成長率が3.9%を超えると、中国の炭素排出量は増加し続けることが示されています(以下の専門家コメントを参照)。

非化石燃料シェアの目標値は明らかにされませんでしたが、 3月12日以降承認後の全文で判明することが予想されます。2020年12月のオンライン気候野心サミットでは、習近平国家首席は、非化石燃料のシェアを2030年までに約25%に増やすことを約束しています(以前の目標は20%)。これが 第14次5か年計画に反映されることが予想されます。

昨年9月、習近平国家首席は、2030年までの炭素排出量ピーク、2060年までのカーボンニュートラル達成を約束しています。李首相は今回の演説の中で、2030年までに排出量ピークを実現するための行動計画を立てる、という政府決定を再確認しました。

また、第14次5カ年計画の承認を受けて、政府部門と地方自治体は、独自の特別計画を策定することになります。

気候変動対策に関しては、中国国家エネルギー局によって起草されたエネルギーおよび電力セクターの計画など、複数の重要なセクター別計画があります。エネルギーに関するセクター別の計画は、石炭消費とエネルギー消費に絶対的な上限を設定します。環境団体は、その計画で炭素排出量の絶対上限を設けることを提言しています。気候変動対策に特化した計画も準備されます。セクター別の5カ年計画は2021年後半に完成する予定とのことですが、期限が設定されていないため、プロセスに時間がかかる可能性があるようです。

<目標をどう解釈すれば良いか?専門家によるコメント>

Dr. Zhang Shuwei (张树伟), Draworld Environment Research Center(エネルギーと環境研究所)チーフエコノミスト:
“As the first five-year plan after China committed to reach carbon neutrality by 2060, the 14th FYP was expected to demonstrate strong climate ambition. However, the draft plan presented today does not seem to meet the expectations. Overall, the plan doesn’t contain enough details on how China plans to accelerate the economy’s decarbonization, nor does it offer much strategic guidance on how to peak carbon before 2030 and reach carbon neutrality by 2060. It is a rather modest goal setting.” “The 14th FYP targets concerning energy and climate revealed today are rather moderate. The plan aims for higher percentages of carbon intensity reduction than energy intensity reduction, which indicates the government expects faster transition in the energy structure than in the economic structure. “ “Our calculations show if the actual annual GDP growth is above 3.9% in the 14th FYP period, China’s absolute emissions will continue to increase.”

Dimitri de Boer, ClientEarth(非営利の弁護士事務所)中国代表:
“The top-line climate targets for 2025 are hard to interpret in the absence of a five-year target for GDP growth. The room applauded when premier Li Keqiang announced that China will act strongly on climate change, which suggests that there is consensus around the need to act. What matters now is whether we see a quick transition to clean energy. The energy authorities were criticized for not taking the transition seriously, as many new coal plants were approved in 2020. We hope many of those projects will still be cancelled.”

Swithin Lui, Climate Action Tracker(気候変動に関する国際シンクタンク)中国責任者:
“In terms of the climate, initial indications from China’s 14th Five Year Plan are underwhelming and shows little sign of a concerted switch away from a future coal lock-in. While it’s positive that this plan does reiterate its commitment to carbon neutrality by 2060, and peaking emissions before 2030, there is little sign of the change needed to reach that goal. We hope to see a coal cap in the more detailed energy sector and climate five year plans later this year, which will help shed light for the international community on the future of China’s emissions growth and its climate commitments.”