運用資産約1145兆円の機関投資家グループ、日本を含むアジアの電力会社へエネルギー移行の期待を示す

12月16日(水)、「気候変動に関するアジア投資家グループ(AIGCC)」が、日本を含むアジアの電力会社に対して、脱炭素戦略への投資家の期待を示す指針を発表しました。

新たな指針はこちらをご参照ください。

<AIGCCとは>
AIGCCとは約50の機関投資家らからなる投資家グループで、運用資産総額は11兆米ドル (約1145兆円) を上回る。ブラックロックやCalPERS、アリアンツ、アクサ、BNPパリバ、三菱UFJ信託銀行、三井住友トラストアセットマネジメント、日興アセットマネジメント、りろなアセットマネジメントなどが参加。

新たな指針は、機関投資家が投資先の電力会社や投資の検討先に対して行う「建設的な目的をもった対話」(エンゲージメント)において活用されるもので、この対話は、Climate Action 100+と並行して実施されるものだとのことです。

<Climate Action 100+とは>
Climate Action 100+とは、温室効果ガスの排出量の多い企業世界161社にターゲットを絞り(日本から10社)、機関投資家が株主として企業に対応を働きかける集団的エンゲージメントの取り組み。2017年に発足。世界の機関投資家540機関以上が参加。

今回、AIGCCによる新たな指針では、日本を含むアジアの電力会社に対して、気候変動リスクへの対応をビジネス戦略と運営に組み入れることを強化し、ネットゼロ経済に即した「脱炭素戦略」の導入を求めています。アジア地域全般で電力会社のCO2排出係数が高いため、とりわけ投資家の懸念材料となっているとされています。日本を含むアジアの電力会社は、世界のGHG排出量のほぼ25%を占めています。

本指針では、電力セクターのベンチマークとしてSBTを挙げています。SBTによると、 2020年から2030年までに、セクター平均の電気事業では、1.5°Cの目標と整合されたシナリオに基づくと、発電におけるCO2排出量を76%削減する必要があり、2°Cをはるかに下回るシナリオでは47%削減する必要があります。つまり、2030年までには全OECD加盟国において石炭火力発電所が段階的に廃止され、OECD非加盟国においては最低でも2040年までに廃止する必要があり、石炭火力発電の新たな建設は完全にゼロとなることを意味しています。

本指針では、再生可能エネルギーに関する技術と経済性の改善によりこれは可能であるとしています。再生可能エネルギーは近年、多くの地域で化石燃料に比べて競争力を持っているにも関わらず、アジア地域では石炭火力発電所に引き続き相当量の投資があること、これによって座礁資産リスクが増加し、アジアでのエネルギーシステムの移行を疎外しているとの認識が示されています。