UNEP 排出ギャップ報告書:グリーン経済復興により2030年排出を25%削減可能

12月9日(水)、UNEPが毎年刊行している年次報告書「Emissions Gap Report 2020(2020年排出ギャップ報告書)」が発表されました。

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<UNEP Emissions Gap Report 2020(2020年排出ギャップ報告書)概要>

COVID-19の世界的大流行により2020年の排出量は減少するが、これは、今世紀の地球温暖化を2°C未満・1.5℃に抑えるというパリ協定の目標に近づけるものではない:

•2020年は、山火事や干ばつ、暴風雨や氷河の融解などの激化を引き起こし、観測史上最も暖かい年の1つになる予定
•2019年に、土地利用の変化を含む温室効果ガスの総排出量は新たな最高値に達し59.1GtCO2eとなった
•CO2排出量は2020年に最大7%減少すると予測される。しかしこの減少は2050年までに地球温暖化が0.01°C抑えられるのみ。
•パリ協定の下での2030年付近の各国の削減目標(NDC)は依然としてひどく不十分。 全て実施されても、2030年に予測されるGHG排出量では今世紀中に世界の気温は3.2°C上昇する。
•そのため、各国の野心度は、2°Cの気温上昇を目指す削減経路では約3倍、1.5°Cでは少なくとも5倍に強化させる必要がある。

気温上昇を2℃(1.5℃)に抑えるためのグリーンリカバリーが重要:

•グリーンリカバリーは、コロナ禍以前に立案された政策の下で想定された2030年の排出量を、最大25%削減できる可能性がある。
•グリーンリカバリーにより、2030年の排出量を44 GtCO2eにできる可能性がある。これだと、66%の可能性で気温上昇を2°C未満に保つことができる排出量の範囲内になる。
•しかし、1.5°Cの気温上昇に抑えるには、さらに多くの対策が必要となる。

2050年ネットゼロ目標を持つ国の数の増加は重要な進展といえる。しかし2050年目標を今すぐ行動に移し、2030年の削減目標に反映しなければならない:

•レポート完成時には、世界のGHG排出量の51%をカバーする126か国が、ネットゼロの目標を採用、発表、または検討している。バイデン次期大統領が公約した通りに米国が2050年ネットゼロの目標を採用した場合、このシェアは63%に増加する。
•ネットゼロ排出目標は良いことだが、2050年の目標と2030年等の国別削減目標(NDC)の大きな開きに矛盾がある。さらに多くの国が2030年目標を見直し、整合させる必要がある。

英語のプレスリリースはこちらをご覧ください。

なお、UNEPは12月2日には、気温上昇を1.5℃に抑えるためには、各国は今後10年間、化石燃料を毎年6%ずつ減らさなければならないとする「生産ギャップ報告」を発表しています。

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<重要な背景情報(UNEPレポートとは別扱いの参考情報です)
・日本を含む世界各国は、気候変動の深刻な被害を避けるために、世界の気温上昇を2℃(1.5℃)に抑えることをパリ協定で合意しました。

・「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」によれば、気温の上昇はCO2の累積排出量(濃度)と比例します。そのため、現在の排出スピードが続けば、2030年~52年に世界の平均気温が1.5℃上昇してしまう可能性が高いとしています。

・これは、「2050年のネットゼロ目標」を設定するだけでは、気温上昇を1.5℃に抑えることはできないことを意味します。IPCCは、気温上昇を1.5℃に抑えるためには、2030年までの世界のCO2排出をほぼ半減(45%削減)する必要があることを示しています。つまり各国は、2050年に確実に排出をゼロにするだけでなく、その経路において、2030年に大幅な排出削減を実現していることが決定的に重要になります。脱炭素の議論で、2030年が重視される背景になります。

UNEPレポートによる評価の背景情報として、ご参考にしてください。国立環境研究所による解説も参考になります。こちらをご覧ください。